【金沢ブログ】 まいどさんが案内――続編①
「まいどさんが案内」の連載が終了して、何かまだ去りがたい思いが残った。続編として、二回か三回くらい延長することにした。
今回は、「まいどさん」の母校であり、教員として最後の赴任校でもある金沢市立紫錦台中学校がテーマである。私は「まいどさん」より1学年上であるから、同じ校内のどこかで出会っていたかもしれないが、お互いまったく意識する機会もなかったから、覚えているはずもない。とにかく団塊の世代。私たちの学年は16クラス、「まいどさん」の学年は17クラスあった。現在では全校生徒400人ほどで、当時の1学年の半分程度である。私は三尖塔校舎の二階、二方が開いて明るい角部屋の教室だったが、講堂を仕切って教室にした暗ぼったい空間で過ごした子どもたちは、暗い中学生活の印象しか残っていないかもしれない。
紫錦台中学校に到着した「まいどさん」は、《ここが紫錦台中学校です。私の母校でもあり、美川出身の島田清次郎が通った学校です。》と、さらりと説明しているが、もう少し詳しく説明を求めれば、このような感じになるであろうか。
「ここで右手に辰巳用水が顔を出しましたね。チロチロと水の音、私、この流れの音が大好きです。私が中学生の頃とほとんど変わっていないですね。そのむこう、木々の間に見えているのが紫錦台中学校です。木造の三尖塔校舎も見えますよ。今では、金沢くらしの博物館になっていますが。」
「その頃、この道路には市電が走っていて、1番と3番、二系統走っていたから、小立野終点にむかうもの、小立野から来たもの、両方合わせると、けっこうたくさん電車が走っていました。校内でも電車の音が聞えてきました。学校の前に下石引町の電停がありました。そう言えば、あの辺で先生が車にはねられた事故のこと思い出しました。10m以上飛ばされたって、言っていました。まもなく、右へ曲って辰巳用水に架けられた橋を渡れば、紫錦台中学校の正門です。中央通路が広くて、両脇にも通路があります。それぞれ木の扉がありますね。当時は中央とむかって右側の通路が開いていました。門柱は石造りで笠木がついていますね。中央の二基が背も高く大きいです。卒業式には在校生がここに並んで、卒業生を送り出すんです。正門に立って。木造校舎が木々に馴染んで、穏やかに、けれども威厳をもって私たちを迎えてくれますね。学校って行きたくない日もありますが、と言うか、行きたくない日の方が多いかもしれませんが、ここへ来ると、ちょっと呼吸を整えさせてくれます。」
「私たちはここから左へ曲って、木々の間を少し行って、昇降口。靴を入れるのに、下駄箱なんて呼んでました。上靴に履き替えて右手へ行くと職員室があって、先生方の様子をチラチラうかがいながら三尖塔校舎へ入る手前左側に保健室。そう言えば、私たちの時分に、もう、バトントワラーがあって、短いスカートの衣装を着て、何か職員室で先生方、鼻の下長くしてたみたいだけど、これはオフレコね。そんな一面もあったけど、私が卒業した翌年の10月7日、埼玉県からやって来た家出少年が放火して、職員室も保健室も焼けてしまいました。消防の人たちは、三尖塔校舎に燃え移らないように懸命に消火活動してくれました。実は、この年の6月24日、市内電車が尻垂坂で暴走して、兼六下で転覆。下校途中の紫錦台中学校3年生の男の子が亡くなった。私より一学年下ね。私が卒業して、それほど経っていない時期、たいへんなことがあったけど、在学中の38豪雪の時には雪の重みで体育館が傾いて、立ち入り禁止になってしまった。私が入学する前には、授業中に教室の天井が落下するという事故も起きています。」
「今日は、植栽をまわり込んで、正面玄関から入ってみましょう。現在は金沢くらしの博物館になっていますから、ここからは有料になりますので、よろしくお願いします。旧制金沢第二中学校の本館として三尖塔校舎が建てられたのが1899年。すぐ近くの北陸英和学校の校舎に尖塔があったので、かっこいいと思って真似したのか、左右対称の校舎の両翼と中央の屋根を尖塔にしたので、全部で三つの尖塔があって、三尖塔。二中と紫錦台中のシンボルになってきました。両翼の尖塔は赤いとんがり帽子。ここだけ赤いので、とっても目立ってました。さあ、校舎の中に入って、どうですか。天井が高いですね。上下式の縦長の窓もしゃれてますね。木造の柔らかさ、温かさが感じられます。階段もとっても上りやすいですよ。踊り場では、男の子たちが相撲取っていて、通るのに邪魔だったけど、けっこうおもしろかったですよ。今は人も少なく閑散としていますが、私が中学生の頃は、生徒がひしめき合っていました。あの頃、校舎ができてすでに60年以上経っていたけれど、今では120年以上経っています。でも、古いまま、何も変わらず、そのまま残っているのが不思議です。人間の方は元気いっぱいの中学生から、こんなふうになってしまいましたけど。」
「三尖塔校舎の裏手に出てみましょう。以前はこの辺に講堂、体育館、特別教室棟などがあって、その先、運動場が崖っぷちまで広がっていました。今は敷地の南東部にある鉄筋の本館を軸に、全部集められ、ずいぶんすっきりしましたが。運動場でも、陣取りしたり、ケンケンパしたり、何か、小学生の頃と変わらない遊びもしてたわね。」
「これ以上、ここにいたら、私、中学生に戻ってしまいそうなので、この辺で紫錦台中学校を後にしましょうね。あっ、ちょっと待って。あそこにいるの島さんですね。――島さん、お久しぶりです。覚えてます?ここに勤めていた、まいどさんです。飛梅祭のこと、思い出しました?島さん。シマシマニシマッシマーって。島さん、あの時、縞々の服着て登場しましたね。元気でね。また、お会いしましょう。」
尖塔の校舎
尖塔の校舎は
雷につごう良く
尖塔の校舎は
階段がすり減り
そのやわらかき
木の温もり
年下の女の子の
スカートのざわめき
ああ
尖塔の校舎は
電車の音
きしむ窓
ストーブの石炭のかけら
ああ
尖塔の校舎は
松のみどりに見えかくれ
すでに色あせたれど
なお
尖塔は
りんとして立つ