ごあいさつ
東京にあこがれて、文学にあこがれて、文学をテーマに東京の街歩きをしてみたいと思ったのがきっかけで、いつしか夏目漱石にはまってしまいました。
2016年の漱石没後100年、2017年の漱石生誕150年。節目の年を過ぎようという今、次の節目の年にむかって、漱石を引き継いでゆきたいと、勝手に「漱石文学館」を開館しました。この文学館が、漱石を知り、語り合う場になれば嬉しいです。
2017年10月
勝手に漱石文学館
館長 北野豊
今日のつぶやき
【秘書のつぶやき】

秘書の北澤みずきです。
漱石と龍之介はどちらも手紙好き。二人の往復書簡、気になり読んでみました。1916年8月21日、千葉県一宮海岸の旅館に滞在中の久米正雄と芥川龍之介に宛てた手紙で、「然し無暗にあせつては不可ません。たゞ牛のやうに圖々しく進んで行くのが大事です。」と励ましています。翌22日、龍之介からの返信には、師である漱石の「ありがたいお言葉」には触れず、翌月の雑誌に掲載される「芋粥」の校正について、そして発表後の不安を訴えます。「宿屋は大抵毎日芋ばかり食はせます。小説も芋粥ですから私は芋に祟られてゐるのでせう。」この龍之介の手紙が漱石のもとに届いた2日後の24日、漱石は2人へあてた手紙で「牛になる事はどうしても必要です。吾々はとかく馬になりたがるが、牛には中々なり切れないです。」と前回と同じ思いを繰り返し語り、文壇の評価など気にしないようにとさらに励ましています。
龍之介はこの手紙を受け取ったのち、8月28日に漱石に返信を書きます。一宮に滞在中の出来事について、そして何よりもあと数日で「芋粥」が発表されることへの不安が綴られます。「牛になること」との励ましに、やはり触れていません。手紙の最後は、漱石の体調を気遣う、次のような文章で終わっています。
「修善寺の御病氣以來、實際、我々は、先生がねてお出でになると云ふと、ひやひやします。
先生は少くとも我々ライズィングジェネレエションの爲めに、何時も御丈夫でなければいけません、これでやめます。」
これらの手紙のやりとりから3ヶ月後、漱石は亡くなります。丈夫でいてほしいという龍之介の願いは叶わず、2人の交流はわずか1年足らずで終わりを迎えます。
龍之介はどうしてこの「ありがたいお言葉」に触れずに返信したのでしょうか。もし「牛のように」という贈られた言葉に反応してお礼など言ってしまったら、本当に先生は自分の目の前からいなくなってしまうのではないか。先生は死期が近いことを悟っているのかもしれないが、そんなことは認めたくない。もっと目先の細かいことをこれからもずっと相談したい…そう考えてあえて反応しなかったのではないかと思うのです。龍之介の甘えたがりでかわいい一面が垣間見えます。こんな師弟関係、ちょっとうらやましいです。
現在、館長の部屋では「文豪の東京」と題して芥川龍之介の作品に描かれた東京についての連載が掲載されています。館長の部屋に、ぜひお立ち寄りくださいませ。

〈参考文献〉
小山慶太『漱石先生の手紙が教えてくれたこと』岩波書店、2017年
平野晶子「芥川龍之介 夏目漱石宛書簡(昭和女子大学図書館蔵)について―「芋粥」「猿」の評価をめぐって―」、『学苑』第760号、2004年1月
豊岡明彦・高見澤秀編『文豪たちの断謝離 断り、謝り、離れる』秀和システム、2021年
『小さな資料室』(Webサイト)
(『館長のつぶやき』より)
新着
連載 漱石こぼれ話』に『25.田端点描』を追加しました。
連載 漱石気分』が完結しました。
21世紀の木曜会』へのご参加、お待ちしてます。
長年の漱石研究の成果をもとに、何ものにも囚われない在野の視点から、漱石を描きます。今までの常識がひっくり返るような事実も浮かび上がってきます。順次、新しい章を追加、掲載していきます。お楽しみに。
漱石に関わる単発のテーマを、思いつくまま、気のむくままに、順次、掲載していきます。漱石気分に書き入れることができなかった「こぼれ話」です。お楽しみに。
漱石に関係あること、ないこと。館長が勝手気ままにつぶやきます。
漱石のもとを訪れる人が増え、漱石の負担を心配した弟子たちが、木曜日に限って漱石のもとに集まるという申し合わせをするようになりました。こうして生まれた木曜会には漱石も顔を出し、集まった人たちも忌憚のない意見を出し合いました。
「21世紀の木曜会」。連載に対する意見、感想をはじめ、漱石に関すること何でも、お互いに語り合い、意見交換、情報交換していきましょう。発言、お待ちしております。
北野豊著『漱石と歩く東京』『漱石と日本国憲法〜漱石からのメッセージ』の紹介と購入方法が書かれています。
漱石の作品を読みたい方、どうぞご利用ください。
クリックすると、「青空文庫」の漱石掲載作品一覧のページへ移動します。
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私のふるさと金沢が生んだ三文豪、泉鏡花・徳田秋聲・室生犀星に関するコーナーです。鏡花については漱石もかなり注目をしており、漱石は鏡花・秋聲に朝日新聞連載の便宜を図っています。犀星は漱石最後の、そしてもっとも才能ある門下生と言われる芥川龍之介と親しくなり、龍之介は漱石が果たせなかった金沢訪問を実現しています。そのような三文豪について、順次、私が書いた文章を掲載していきます。
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